新会社法基礎養成講義 【第13講】 株主の権利について 080204

こんにちは。皆様いかがお過ごしでしょうか?最近風邪のせいか鼻水がよく出ます。PC作業をやっている最中でもズルズルと鼻をすすっています。私たち大人も疲れがたまると普段は元気な方でも風邪などを引きやすくなるので、皆さんも注意をして一年で一番寒い季節を乗り切ってくださいね。
 それでは、本題に入りましょう。
本講では、「株主の権利」について扱っていきたいと思います。

株主の権利
株主の権利とは、株主が、株主たる地位に基づいて会社に対して有している様々な権利のことをいいます。
 株主の権利については、様々な視点から分類をすることができますが、そのうち重要な
ものとしては、自益権・共益権という分類方法、また単独株主権・少数株主権という分類
方法があります。
 ここで、自益権・共益権という分類方法は、権利行使の「目的」による分類です。
 そして、単独株主権・少数株主権という分類方法は、株主権の行使の「要件」による分
類です。
以下、自益権、共益権、単独株主権、少数株主権という順番で見ていきましょう。

自益権
 自益権というのは、端的にいえば株主が会社から経済的利益を受けることを目的とする権利のことです。皆さんが一番なじみのあるものとしては「配当をもらう権利(剰余金配当請求権)」があります。もちろん、その他にも様々な種類があります。
 具体的には、
  @剰余金配当請求権(会社法105条1項1号)これは、先程ありましたね。
  A残余財産分配請求権(会社法105条1項2号)
  B株式買取請求権(会社法160条、469条、785条)
  C取得請求権付株式の取得請求権(会社法166条)
  D株券交付請求権(会社法215条)
  E株式名簿名義書換請求権(会社法130条)
  F単元未満株式買取・売渡請求権(会社法192条、194条)など
があります。

共益権
 共益権というのは、端的にいえば株主が会社の管理や運営に参加することを目的とする権利のことです。
 具体的には、
  @株主総会における議決権(会社法105条1項3号)
  A株主総会召集権(会社法297条)
  B株主提案権(会社法303条、305条)
  C株主総会召集手続調査のための検査役選任請求権(会社法306条)
  D累積投票請求権(会社法342条)
  E役員解任請求権(会社法854条1項)
  F代表訴訟提起権(会社法857条等)
  G取締役・執行役の違法行為差止請求権(会社法360条、422条)
  H解散請求権(会社法833条1項)など
があります。

単独株主権・少数株主権
 単独株主権とは、1株を有する株主でも行使をすることができる権利のことをいいます。
 少数株主権とは、総株主の議決権の一定割合あるいは一定数以上の議決権を有する株主、更に、場合によってはこれに加え、発行済株式総数の一定割合以上の数の株式を有する株主が行使することができる権利のことをいいます。
そして、これらに加えて一定期間の議決権または株式数の継続保有を要件とする場合と継続保有を要件としない場合があります。

 なぜこのように、会社法が一定期間の議決権または株式数の継続保有を要件とするのかおわかりでしょうか?
 会社法は、総会屋が、企業に不祥事などの問題が起こったあとに、これ幸いといってその会社の株式を取得して、少数株主権を行使することによって責任を追及されることを経営陣が恐れるがあまり、ついつい会社の利益に反するような総会屋の要求をのんでしまう、という事態が起こらないように、という会社荒らしを防止する趣旨で継続保有の要件を課しているのです。

 継続保有の要件があれば、会社が不祥事をおこしてからこれ幸いといって株式を取得した総会屋がいたところで、不祥事の前から継続して株式を保有していないので会社に対する少数株主権を行使をすることは難しくなりますから、この要件があることによって不祥事の前から株式を保有していた本当に会社の株主としてふさわしい者からの少数株主権の行使のみを認めることができやすいというメリットがあります。

 しかし、このように継続保有の要件を課すことは、たとえ会社の不祥事のあった後に株式を取得したものであっても、実際にはそういった不祥事に乗じて株式を取得したわけではなくて、本当に会社の株主として正当な目的で少数株主権を行使しようという人の権利を侵害することになりかねません。

 そういった意味で、継続保有の要件は、ともすれば正当な株主の権利を侵害してしまう、言い換えれば、いい加減な経営者に加担することにもなりかねないのです。

 そのために、できる限り継続保有の要件を課す範囲は少ない方が株主の権利行使という観点からは望ましいといえます。

 そこで、会社法ではこの継続保有の要件は、公開会社の株主の少数株主権に限定されており、非公開会社の株主の少数株主権には継続保有の要件は課されません。
この理由は、そもそも非公開会社であれば株式を譲渡するには会社の承認を必要とするために、総会屋となるような危険な者が株式を取得してしまう可能性はかなり少ないといえるでしょう。

 このように、会社にとって弊害がないのであればできる限り継続保有の要件を課すことなく少数株主権を認めていこうという会社法の意図が汲み取れると思います。
 上手にバランスをとって会社の利益と株主の利益の調和を図っているのでしょうね。
 直言すれば、公開会社の少数株主権には、総会屋などの誰でもが株式を取得する可能性があることから少数株主権の行使がともすれば株主の権利濫用になってしまうことを防止するために、継続保有の要件を課すことが必要となりますが、非公開会社の場合には、株主になる段階で上手に選別がされるために、濫用のおそれが少ないので、あえて少数株主権の行使の際には継続保有の要件を課すことは必要がないということになります。

 このように公開会社か非公開会社か否かで区別をしているそもそもの理由は、健全な会社を作ることによる健全な経済活動を進展させ、それによって世界の大企業に引けをとらない日本を作っていこうという国益がかかっているからに他なりません。
 ざっとですが、具体的にみていきましょう。

 まず、1株でも保有していれば行使できる単独株主権としては、継続保有要件が不要なものに
@株主総会決議取消訴権(831条1項)
A募集株式発行等差止請求権(210条)
B募集新株予約権発行差止請求権(247条)
C取締役会設置会社ではない会社の株主提案権(303条1項、305条1項本文)
D累積投票請求権(342条1項)
E定款・株主名簿等の閲覧請求権等(31条2項、125条2項等)
F設立無効や合併無効等の訴権(828条2項)があります。

 また、6ヶ月間の継続保有要件があるものには、
@取締役・執行役の違法行為差止請求権(360条、422条)、
A代表訴訟提起権(847条)があります。

次に、少数株主権としては、
@総会検査役選任請求権(議決権100分の1以上かつ継続保有期間6ヶ月)
A会計帳簿等閲覧権(議決権100分の3以上 または 株式数100分の3以上)
B取締役等解任請求権(議決権100分の3以上 または 株式数100分の3以上かつ継続保有期間6ヶ月)
C検査役選任請求権(議決権100分の3以上 または 株式数100分の3以上)
D株主総会招集請求権(議決権100分の3以上かつ継続保有期間6ヶ月)
E解散請求権(議決権10分の1以上 または 株式数10分の1以上)があります。

 以上ざっと見ていきましたが、皆さんは細部にとらわれず、大きい流れで理解を深めてください。これで今回の講義を終了します。
 

 掲載:きくいけ博士…企業法務部に所属し法律問題、労働問題、判例分析に取り組む

索引へ戻る